ジャズドラマーちぐさ~ジャズな生き方で自分を解放しよう!

ジャズドラマーちぐさ、ジャズな生き方で自分を解放する試みをしています。少し疲れた時、ジャズの名曲と共にジャズな生き方で楽になりましょう。

賢者カメレオンが冒険しその後王様になった話

カメレオンは景色に合わせて
体色を変幻自在に操る。
こうすることで敵から狙われにくくする。
また、じっと静かにしたまま
目だけをあちこち動かして
まさに虎視眈々と獲物を狙う。
猫騙しさながら、長い舌を伸ばして
生きたままの新鮮な状態で
狩りを成功させる。

人間でいえば、こういうことだろう。
時代の変化に合わせ柔軟に頭を切り替え
敵をなるべく作らないようにする。
一見、ノンビリしていながらも
実は常にアンテナを張り巡らせ
情報と分析を行っている。
そしていつの間にか誰よりも早く
最新の情報を旬なうちにキャッチする。
そういうところから
カメレオンは賢者に例えられる。

ではジャズミュージシャンのカメレオンといえば?

ハービー・ハンコック
(ピアニスト、キーボーディスト、コンポーザー、プロデューサー)

1961年から未だ現役で
ジャズシーンで活躍している。
演奏家としてはもちろん
作曲、演出、プロデューサーなど活動の幅は広い。
ジャズミュージシャンで
これほどマルチに成功している例も少ない。
ミュージシャンでもあり
ある意味プレジデントでもある。

21歳でデビューしたがその前は
7歳の時でピアノを始め
11歳でシカゴ交響楽団と共演。
ジャズを始めたのは高校時代から。
グリネル大学では音楽の他に電気工学も専攻し博士課程も取った。

デビューアルバムTakin' off から
彼独自のファンキーなテイストが色濃い。
しかしこの時代はマイルスなどもまた
従来のジャズとは違った試みをしていたから
びっくりするほど新しいことでもなかった。

後にそんなマイルスに見出され共演し
抜けた後に自作アルバムをリリース。
そこで一皮も二皮も向けたわけだが
マイルスとはそれ以後も時々セッションをするなど、上手くお付き合いしていたようだ。

その数年後彼のエレクトリック・サウンドへの処女航海が始まる。
子供向け番組で電子楽器をふんだんに取り入れる一方
アフリカの民族音楽にも傾倒
しまいにはスワヒリ語でタイトルをつけたアルバムまで作成してしまうほど。
最新鋭の電子機器と最古の伝統音楽
相反することを同時並行でやっていた。

そこでリリースされた問題作。
Headhunters

この作品が問題作と言われる所以は
ピアニストとして成功していた彼が
電気系サウンドを取り入れたことに
従来のファンから批判の声が殺到したからだ。
最新鋭の楽器が並ぶステージでは
「もうアンタはピアノ弾けなくなったのかー?(笑)」と野次が飛んだ。
しかしそんな彼らの前で
彼はサラリとアコースティック・ピアノを弾き、未だ衰え無しを見事に証明した。

批判の声を一気に味方につけたハービーはその後も止まらない。
マイルス一味の軍団を集めてVSOP5tetを結成し
一旦伝統ジャズのクインテット活動をしたが
その後もエレクトリック路線は続き
ヒップホップやDJスクラッチも取り入れ
当時の今時サウンドも創り出す。

さらに、演奏家だけに留まらず
映画で音楽監督の指揮をとり
自らも俳優として出演。
2003年には東京ジャズフェスティバルでは
総合プロデューサーを務め
ユネスコ親善大使として社会活動にも貢献した。

問題作Headhunters には
chameleonという曲が収録されている。
それは他ならぬ、ハービー本人の姿であるに違いない。

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